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田村日記

(9) 2015年 秋冬の巻

15/09/01 UP

● 2015年12月20日(日)

【猫の命日】
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飼っていた猫が亡くなって1年たちました。いまでも写真に向かってときどきお話をしています。死者は永遠に心のなかにありますね。とても心がおだやかです。去年は、この時期に妹がシュトーレンをつくって送ってくれました。やさしい甘さが忘れられません。
今年も妹からシュトーレンが送られてきましたが、今回は札幌にあるオーガニックカフェ「知恵の木」というお店のものでした(写真)。こちらもとってもおいしかったです。でも、シュトーレンを食べると猫を思い出してしまいますね。

「知恵の木」は、札幌に帰省すると妹とよく訪れるお店です。いつも素敵な笑顔の店主がおいしいお料理を作ってくれます。

「知恵の木」
http://www.chienoki.info

● 2015年12月12日(土)

【イベント企画中】
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まだ水面下進行中ですが、道具ラボとして新しい表現となりそうなイベントを企画しています。その準備のため、伝統芸能の道具を作っている工房をあちこち訪問しています。この写真は、歌舞伎のかんざしを作られている「かざり工芸 三浦」さんです。
以下は、2009年に田村が三浦さんを取材した記事です。

歌舞伎の逸品を手に入れる〜かんざし編〜
http://www.kabuki-bito.jp/special/tepco/33/no1.html

この企画は、道具を作る職人さんたちを一般の方が具体的に応援できるものです。うまく実現できれば来年2月の実施。その際は、ぜひみなさんに告知させていただきたいと思っています。

話は変わりますが、先日、部屋の模様替えをしました。今年はあまり読書ができなかったので、ゆっくり本を読める場所をつくりました。家具をどう動かすか、かなり長く検討しましたが、うまくいったようです。古い和箪笥の上に、昨年冬に亡くなった猫のおまいりコーナーも作りました。とても気に入っています。
8年ぶりくらいの模様替え。生活は微妙に変化しているようで、快適に過ごすための微調整という感じになりました。

● 2015年11月25日(水)

【狂言の「楢山節考」】
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狂言方和泉流の野村万作さんの狂言「楢山節考」を拝見してきました。「楢山節考」は、深沢七郎によって書かれた小説で、それを狂言として上演したものです。初演は1957年で、58年ぶりとのこと。
70歳になると山奥に老人を捨てに行く「楢山まいり」の風習がある村が舞台で、主人公(野村万作)は、69歳のおりんという老婆。つい最近も介護疲れで老夫婦とともに心中しようとした娘のニュースなどもありましたが、昔も今もかわらない深く重たいテーマです。

能楽堂へ行くまでは「楢山節考」がどんな風に狂言として表現されるのか、あまりうまく想像できていませんでしたが、見終わった感想としては、私自身はすばらしい舞台だと思いました。演劇と様式性のバランスの落としどころが絶妙というか、素直にストーリーを理解できましたし、演者の高い技術によって、生々しくなりすぎない感じも心地よかったです。いい意味で心の底がにぶく割れるような感じがしたというか。野村万作さんは、せりふは全くなく、すべて身体の表現のみでしたが、身体から意図がくっきり発せられていました。

narayana_02 「楢山節考」の配役(クリックすると大きくなります)

客席の舞台への集中力も非常に高く、泣いているお客さんが多かったのも印象的でした。そして、終わった後の拍手の入り方がとてもいい感じで、長い長い拍手が観客の心をうつしているかのようでした。50分の上演でしたが、不思議な時間感覚でした。国立能楽堂、超満員。

● 2015年10月27日(火)

【「備後畳」について】
2015年6月にNHKBSザ・プレミアムにて「京都御所 至高の美の守り人」という番組が放送されました。私も拝見して、とてもいい内容でしたので、このページでも視聴メモを掲載しました(2015年6月10日の日記)。この番組では、畳作りについても紹介されており、広島県福山市で畳表を製造されている方も登場しました。その方から、道具ラボ宛てにメールをいただきました。以下、抜粋にてご紹介します。
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あの取材は去年の刈取りの様子でしたが、今年も良いい草が採れ国宝や文化財の修復に役立てればと思っております。また、来年の収穫に向けて11月に植付を行います。今回は、備後い草が衰退していることを危惧し、文化庁の選定保存技術保存団体の「文化財畳保存会」の主催で「備後畳表公開セミナー」を開くこととなりました。
国宝や重要文化財の建造物の保存に欠かすことのできない「備後畳表」を構成する「備後い草」を衰退させることなく、みなさんに周知していただき、また次世代の担い手が生まれることを願い開催することとなりました。なんとか、続けて行けるように頑張っております。
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この畳表を製造されている方とメールで少し交流しておりまして、「備後畳表公開セミナー」についての情報も教えていただきました。
日時:11月29日(日)11:00-16:00
会場:広島県立歴史博物館(広島県福山市西町2-4-1)
http://www.manabi.pref.hiroshima.jp/rekishih/
参加費無料

「備後畳表公開セミナー」のチラシデータ(クリックすると大きくなります)
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● 2015年10月11日(日)

【ドナルド・キーンさんの言葉】
10/10に放送されたNHKスペシャル「私が愛する日本人へ~ドナルド・キーン 文豪との70年~」。番組最後のキーンさんの言葉が、印象的でした。

「私はだいたいにおいて、日本は良い方に来たと思う。しかし自分たちの伝統に興味がないということは、ひとつの弱点だと思う。伝統は、時々隠れてしまう、見えなくなることがある。しかし、流れている、続いている。それは日本の一番の魅力です」

私も若いころは、日本の伝統が苦手でした。それは個人的なものもあるかもしれませんが、社会全体の雰囲気にも要因があったように感じます。でも、また最近、その流れは変わってきているようにも思います。
伝統のよさに再び社会全体が気づいたとき、それを享受できるのは、伝統をコツコツと「続けている人」がいてくれるおかげです。

● 2015年9月25日(金)

【かんな秋のアート祭り】
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群馬県の鬼石(おにし)という小さなまちのアート・イベント「かんな秋のアート祭り」に行ってきました。堀越千秋さんをはじめ、様々なアーティスト(外国人の作家さんや地元の幼稚園児)の作品が展示されています。がしっとディレクションされた感じではなく、ゆるっとしていますが、のんびりいい感じです。
このイベントには、私の文章の師匠が関わっていて、お誘いをいただいてでかけました。山あいの鄙びた土地ではありますが、堀越千秋さんをはじめ、おもしろい人たちが集まっていて、アートレジデンシーなどの活動もさかんになっているようです。私も久しぶりに師匠に会い、ゆっくり話ができました。堀越千秋さんにも始めてお目にかりましたが、生まれたてのままのオトナ!という感じで、とても素敵な方でした。
鬼石は、かつては林業で栄えたまちで、立派な建築も残っています。川あり山あり。近くに八塩温泉という小さな温泉地あり。いつも東京でせかせか暮らしているので、心も身体ものんびりと開放されて、すごくリフレッシュしました。
私は、八塩館という旅館に泊まったのですが、少し古い建物ではありましたが、温泉がすごくよくて、体がポッカポカになりました。山のハイキングなども楽しそうですし、また行きたいなと思っています。やはり山が見える土地はいいですねーー。
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「かんな秋のアート祭り」9/27まで
http://gunma-dc.net/43940

● 2015年9月4日(金)

【能について思うこと】
なんとなくですが、3年に1回くらい能を見に行く人を増やしていけたらいいかなと思っています。年に何度も見に行くような濃いファンではなく、整体や、占い、マッサージに行くのと同じような感覚で、ときどき「こういうときは、能に行こう」みたいな。
そいういう人が100人増えると、またちょっと違ってくるのではないかなと思ったりしています。そういう人が増えるように、元気になりたいなら、こういう演目、悲しみに浸りたいときはこういう演目〜みたいな、演目紹介があってもいいかなとか。
がっつり能にはまる人も大事、ライトに能を楽しむ人も大事。そして、そういうライトな人をちゃんと受け入れる姿勢も大事。

● 2015年9月1日(火)

【組紐】
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組紐職人さんに作っていただいた特製の房が到着しました。いずれも歌舞伎の小道具の組紐作製の残り糸で作ってもらっています。
オレンジ :『矢の根』の三本太刀紐や鎧房など
緑   : 鎧房など
紫と浅葱:仁王襷(『暫』の鎌倉権五郎などがつけている、すごく太い組紐のたすき)
http://enmokudb.kabuki.ne.jp/repertoire/1056
(この房は、文章講座を受講してくださった方に、終了記念として進呈しています)