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田村日記

「ドクター・ホフマンのサナトリウム」2019年11月

19/11/13 UP

ケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出の演劇「ドクター・ホフマンのサナトリウム 〜カフカ第4の長編〜」を観てきました。
『変身』などで知られる作家のフランツ・カフカを題材とした作品。「ドクター・ホフマンのサナトリウム」というのは、なんかよくわからないタイトルだなと思っていたのですが、カフカが最後に過ごした療養所の名前なのだそうです。
物語は重層的にからみあっていて、ときどき頭のなかがグルグルと迷子になるのですが、そこも魅力的。日常のなにもかもを忘れて、どっぷり世界に浸れる楽しい時間でした(3時間半という長丁場だけど、退屈してる暇がない)。


演劇は、ちょっと独特の「におい」みたいなものがあるのですが、この舞台は、センスがよくて、おしゃれで都会的。小難しいウンチクをたれる人に出くわさないですむような、軽やかさがあります。
映像や音響、音楽、装置がすごく洗練されていて、とにかくテンポがいい。オープニングのあたりなんか、めちゃくちゃかっこいいんですよ。音楽なんかも、舞台上で生バンドがステキな感じで演奏されるし、舞台転換も素早く、かつその行為自体も見ていて面白かったです。

能や歌舞伎などを観ていると、役者は幼少期から鍛え上げられた身体、発声をもっているので、観る方としても、それをそなえていることが当たり前のように感じられます。なので、普通の演劇で、中途半場な身体を見せられると、戯曲に入る前に、その身体性のつたなさの壁でちょっとストップがかかっちゃうことがあります。
でも、この舞台では、音響の調整がすごくうまくて、なんというかテレビや映画に近い感覚で、生の舞台がみられるんです。

けれども、ちゃんと「演劇」としての芯は通っていて、映像の世界では絶対味わえないものを大きく含んでいる。いい感じでハイブリッドというか。伝統芸能の道具の復元にも言えることなんですが、使える技術はうまく使って、補強して、どんどん前に進めばいいんだなと、改めて感じました。

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
「ドクター・ホフマンのサナトリウム 〜カフカ第4の長編〜」
https://www.kaat.jp/d/DrHoffman?fbclid=IwAR0gYw4aMVcvUKrHsKc4thLkSB1e91B_o2D237KA34UElyHKqq2b8jv-dvE

2019年11月07日(木)~2019年11月24日(日) 
上演時間:約3時間30分(休憩あり)

【作・演出】ケラリーノ・サンドロヴィッチ
【振付】小野寺修二 【映像】上田大樹 【音楽】鈴木光介
【出演】多部未華子 瀬戸康史 音尾琢真 大倉孝二 村川絵梨
    谷川昭一朗 武谷公雄 吉増裕士 菊池明明 伊与勢我無
    犬山イヌコ 緒川たまき 渡辺いっけい 麻実れい
    王下貴司 菅彩美 斉藤悠 仁科幸

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