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田村日記

(8) 2015年 夏の巻

15/05/01 UP

● 2015年7月25日(土)

【ふたりのイーダ】
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今年もまた8.6が近づいてきました。
私は広島市の出身なのですが、今思えば広島の小学校では「原爆」についての教育が非常にさかんでした。小学校低学年で目の当たりにした原爆資料館の衝撃は、今もよく覚えています。夏休みの宿題では、いつも原爆に関する課題。ちょっとしんどいくらいでした。
でも、そのおかげでずっと心の底に「原爆」がこびりついています。文章を書く仕事をしていながら、具体的なことは未だなにもできていませんが、全然違うジャンルのことをしていても、なにかしら長い糸でつなげていきたいという気持ちはあります。
原爆にまつわる本で、数年ごとに読み返している本をひとつご紹介します。

『ふたりのイーダ』松谷みよこ(1980 講談社)

私は講談社青い鳥文庫で読んでいます。今年は、また読んでみたいと思います。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784061470118

● 2015年7月13日(月)

【祗園祭のちまき】
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今年も京都の職人さんから祗園祭の「ちまき」がおくられてきました。「大船鉾」のちまきです。なんでも去年は、発売後1時間もたたないうちに完売したそうです。すごいですね。
今年は「竹」について動いているので、これまでとはまた違った目でちまきを見ています。
知人から送ってもらった「宮津・竹の教科書2014」という報告書に、「チマキザサ葉採集に関する伝統的知識の保存と伝承」(京都大学農学研究科 東口涼)が掲載されています。その報告によると、このちまき用のササは伝統のサイクルがこわれてきているとのこと。
ちまきの材料は、クマザサの一種で通称「チマキサザ」というそうです。大型で香りがよく葉の裏に毛がないことから、ちまきや麩まんじゅうなどに利用されているそうです。
ところが、2004年から2007年にかけて約60年に一度という「ササの一斉開花」がおこり、それからササ不足に。加えて、ササ葉を採集する人たちの技術継承の問題もあるようです。
そこで「チマキササの里親」事業などもはじまり、現在は「チマキササ再生委員会」という体制が整って、積極的な取り組みが行われているそうです。とても参考になる報告でした! 私たちもなにか行動を起こせたらと思っています。

● 2015年7月12日(日)

【歌舞伎:劇場による舞台機構の違い】
歌舞伎は、廻り舞台(盆と呼ぶ)という舞台機構をよく使います。そして、この盆のなかにはセリと呼ばれるエレベーターみたいなものがついています。
たとえば歌舞伎座と国立劇場では、その盆の大きさやセリの大きさ位置、数が違います(結構、違うのです)。この機構の差によって、同じ演目でも演出が微妙に違うこともあります。
また、ちょっとマニアックになりますが、舞台の板の目の方向も2つの劇場では違っています。
歌舞伎座は、客席から見ると縦方向でそろっています。国立劇場は前のほうは縦ですが、途中から横方向になります。道具の出し入れの方向を考えると、横方向のほうがいいような感じもしますが、縦でそろっているほうが、気持ちいいとも言えます。
客席からはあまり気にならない点だとは思いますが、実際に舞台に立っている人は、それなりに異なる雰囲気に感じられるのではないでしょうか。
歌舞伎座でも、セリの位置の関係で盆をちょっとまわしておくことがあります。そうすると板の目がずれるわけですが、目がそろっていることに慣れていると、それを見ているのは、ちょっとすっきりしない感じがするのです。目が自然に覚えることって、すごいなと思います。

● 2015年7月9日(木)

【日本民家園を訪問】
神奈川県川崎市にある日本民家園。蓑の作り方の冊子があるというので、その冊子を買いがてら出かけてきました。
日本民家園は、古民家の野外博物館で江戸時代の民家など25の文化財建造物を移築してあります。広大な敷地(しかも、緑いっぱいで、起伏に富んだ地形が魅力!)をハイキングのように散策しながら、歩くことができます。合掌造りの家や、東北の馬と一緒に暮らした民家などもありました。
また、すぐ隣には岡本太郎美術館があります。これがまた、素晴らしい建築、展示空間でびっくりしました(Webサイトはイマイチですが、実物は素晴らしいです)。
東京都内からは、少し遠いですが、一日がかりで出かける価値があると感じました。
今回は、書籍『オオカミの護符』の著者である小倉美惠子さんにご案内いただき、この2つの施設をめぐりました。民家園の建物に靴を脱いであがり、古い木や土、紙でつくられた空間にいると、不思議な落ち着きがあり、小倉さんとも大切なお話ができたように感じます。
昔の日本人は、ああいう豊かな空間で日常生活を営んでいたんですね。

日本民家園
http://www.nihonminkaen.jp/

岡本太郎美術館
http://www.taromuseum.jp/

● 2015年6月10日(水)

【NHK「京都御所 至高の美の守り人」視聴メモ】
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録画していたNHK BSプレミアム「京都御所 至高の美の守り人」を見ました。1時間半のドキュメンタリー番組でしたが、とても見応えがありました。私は20代は京都で働いていたのですが、職場が近いということもあり京都御所のすぐそばに住んでいました。会社の用事で、自転車に乗って四条方面へ行くときは、御所のなかを通っていました。砂利が敷いてあるので自転車で通るとかなりガタガタしましたが、あの広大な空間を通り抜けるのはなかなか気持ちがいいものでした。お昼休みには、松林の下に寝転んだりして。でも、高い木の上から落ちてくる松ぼっくりはかなり危険でした!
御所を通り抜けることはあっても、なかなか内部へは入ることはできませんでした。今回の番組は、丁寧に取材をしてあり、とても興味深く拝見しました。そばにいても、何も知らなかったのだなと改めて実感。

番組では、さまざまな職人さんが紹介されていました。
【松】
・松の剪定などをする庭師:
御所の松は高さが20mくらいある。上に延びていこうとする枝をおさえて、やわらかいシルエットにするのが御所流。「長柄鎌(ながえがま)」という4mもある特殊な鎌を使わないと剪定できない。この鎌を扱える職人はごくわずか。
・松の健康を管理する人:
老木はだんだん弱ってくる。かつて「川芎(せんきゅう)」という漢方薬を使った栄養剤のようなものが使われていた。すぐに効果がでないことからすたれていたが、若い人が復活させている。

【檜皮葺:屋根】
・屋根職人:
檜皮葺は、1300年前から伝わる日本独自の技術。檜の皮を使う。30年ごとにふきかえなくてはならない。檜の皮を留めるのは「竹のくぎ」。職人はこれを口にふくんで、1本ずつ出して使う。1坪に必要な檜の皮は、1800枚。
・檜皮を集める職人:
職人の数は、20人くらいしかいない。ロープ1本で、高い檜に登る危険な仕事でもある。特殊な木のへらを使い、外樹皮だけをはいでいく(内樹皮を傷めると、木の生長をさまたげてしまう)。

【畳】
・畳職人:
御所は木造建築なので、長年のゆがみがある。このため、畳の大きさを1枚1枚変えている。びたっとすべてがはまるだけでなく、畳のへりの柄も合うように作る。茶室の畳は、備後表(びんごおもて)という最高級の畳表を使う。黄金色で、普通の1.5倍ほど目が細かい。
・い草を作る人:
広島県福山市で作っている。この地方は温暖で、ねんど質の土壌。これが良いい草を育てる。このところ畳の需要が減り、また中国産の安い商品に押されて、い草農家は減り続けている。現在7〜8軒。このため、御所に出入りしている畳職人が、人出がかかる刈り取りなどの作業を手伝って応援している。刈り取ったい草はその日のうちに泥染めという作業をしなくてはならない。泥を扱う業者は、最後の1軒が廃業してしまった。い草を作る人が泥の在庫を譲り受けているが、それも2年分しかないという。

【漆喰・左官】
・左官:
御所の壁は「パラリ壁」という特殊な手法が使われている。真っ平らではなく、小さなつぶつぶが入っており、光があたると角度によっていろんな表情を生む。このパラリ壁の塗り替えに大津の左官職人が挑む。漆喰の調合が鍵。壁を強靱にするため「俵灰(たわだばい)」という石灰を使う。
・石灰会社:
高地の石灰会社が幻とも言われる「俵灰」を作っている。石灰岩を高温で1週間ほど焼く。焼き上がった石灰を俵に入れて数ヶ月寝かせる。俵に入れることで、空気中の水分を取り入れ、より細かくなる。

【衣紋道(えもんどう)】
・日本最後の着付の作法。大喪の礼、即位の礼くらいしか実践する機会はない。ベテランも、昭和天皇の大喪の礼と、現在の天皇の即位の礼のときの2回しか実践していないという。淡々と伝えていく。

【表具師】
・表具師:
御所内の障壁画の修復を担当する。「裏打ち」と呼ばれる工程が大事。その和紙は、丹後半島で作られている。
・和紙職人:
丹後地方にはかつては200軒の和紙職人がいたが、現在は1人だけ。材料となる楮(こうぞ)と呼ばれる植物を栽培する人もいなくなったので、和紙職人自身が育てている。この地域の楮は繊維が短いため、目の詰まった和紙ができる。和紙をすく作業も、ふつうはタテだけにゆらすが、ヨコにもゆらして複雑に繊維をからませる。

NHK BSプレミアム「京都御所 至高の美の守り人」
http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/3303/2578237/index.html

やはり映像があると、わかりやすいですね。そして畳職人がい草の刈り取りなどを手伝っているという姿も非常に印象的でした。どのジャンルも、作り手の数が減っているのが心配です。