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田村日記

(11) 2016年 夏の巻

16/05/01 UP

● 2016年8月3日(水)

【能のポンポン】
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8/7に能のイベントにゲスト出演させていただきます。その準備をしていて、久しぶり能の「梵天(ぼんてん)」を出しました。数年前に組紐の職人さんから、いただいたものです。絹製でとっても手触りがよいのです。この梵天は、「おまんじゅう」とも言うそうで、山伏の扮装の一部となります。
梵天について、もう一度おさらいしようと思い、これを作られた職人さん(組紐や房を作られる専門の職人)に問い合わせをしました。この梵天は、極天(ごくてん)という絹糸で作られていますが、合糸して太い糸のような風合いになしてあります。でも、糸メーカーの体制が変わってしまい、現在は同じ物はできないとのこと。というわけで、この梵天は、貴重とのことでした。
極天を詳しく説明してもらいました。「蚕から引き上げた生糸(きいと・なまいと)からタンパク質を落として(落とし具合で○分練りと表現)、繊維部分(フィブリル・フィブロイン)だけを残したものが極天です。これは8中の極天を合わせたものですが、撚り合せていない(厳密には最低限の片より)です。束感のあるのは極天を撚った糸で、太白糸と称される。手で撚りあわせて調整もできますが、本来は生糸を硬く撚った後に(糸にしてから)練りをしたものです。よって体積が減るので柔らかくなるため、甘撚りで柔らかくしたものとは伸縮特性が違う」。
糸ひとつとっても、ものすごく深い世界が広がっていることがわかりますね!

● 2016年7月23日(土)

【奈良の櫛職人さんの遺品・里親捜しのお手伝い】
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櫛作りの職人の娘さんが、道具ラボのWEBサイトをご覧になり連絡をくださいました。その職人さんは亡くなられているようですが、たくさん櫛が残っているそうです。「父が丹精して作った櫛なので、どこかで使ってもらいたい」とのこと。歌舞伎の床山さんや、小道具さんで使えないか、橋渡しのお手伝いをすることになりました。
少しメールでやりとりをしているうちに、その櫛は理容師さんのための櫛であることがわかってきました。伝統芸能の世界の職人さんは、つげなどの木製の櫛を使うことが多いので、ちょっと合わないかもしれませんが、せっかくのご縁なので、知人の理容師さんなどにも話をきいて、進めているところです。

そうこうしているうちに、奈良の櫛職人の娘さんから、櫛が届きました。丁寧に梱包されていて、櫛への愛情が感じられて心にしみました。
べっ甲製、水牛の角製など高価なものが多くありました。櫛の歯がとてもきれいで、いつまでも眺めていたくなります。道具ラボも、歌舞伎の床山の櫛を復元するときに「歯引き」とかなり長期間格闘しましたので、歯には思い入れがあります。
手引きの場合、歯を作るときに1箇所でも失敗すると全部パーになってしまいます。相当の集中力がないと、いいものはできないと思います。また、素材によって、熱の溶け具合も違うので、それぞれの素材で道具なども違っていたのではないかと思います。櫛を手作りするというのは、本当に大変だと思います。
床山さんの櫛(アセチの飾り櫛)は、結局、めがねの技術で使われるレーザー加工に頼りましたが、それもやはりいい職人さんがいないとできないものでした。特殊な金型もつくりましたが、これも職人の知恵がないとできませんでした。
どんな手法であれ、職人がモノへの愛情をこめて作ったものは尊いですね。

● 2016年7月13日(水)

【京都の職人さんとのつながり】
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今年も京都の職人さんから祇園祭のちまきが届きました。チマキササの良い香りがします。「いろいろあるけど、このちまきで厄払いしましょう!」と。遠くにいても、思い出してくださり、こうしてわざわざ送ってくださる。ありがたいことです。

道具ラボの活動ですが、これからもう少し多様な人達と交流しながら、発展していきたいと考えていて、今、そのためのしくみを思案中です。やるとなったら、けっこうパワーを使いますので、腰があがらないのですが、そろそろそういう時期になってきたなと思っています。また、進みはじめたら、ご報告したいと思っています。今年も暑い夏がはじまりましたが、みなさんも身体に気をつけて、元気に過ごしてくださいね。

● 2016年6月18日(土)

【歌舞伎のツケ打ちさんの衣裳】
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歌舞伎の大道具さんの部屋へ行ったら、ツケ打ちさんが「たっつけ」に着替えていたので、また脱いでもらって、最初から着付け方を見せてもらいました。こういう袴って、どうやってはいているのか謎だったので、おもしろかったです。すねのところとかも、ぴたっとしていていいですよね。
袴の布地の柄や、仕立て方、着付け方、帯をどういうのを使うかなど、それぞれに工夫があるようでした。歌舞伎座の場合は、うしろに歌舞伎座の座紋の鳳凰丸がついています。

● 2016年5月6日(金)

【組紐の家】
糸の準備

組紐をつくる職人の江口裕之さんのお仕事場へ久しぶりに出かけてきました。ご自宅とお仕事場が一体になった建物で、江口さんの奥さんの恵さんも、一緒に働いておられます。舞台用の特殊な長い紐も作るため、廊下をフル活用して作業をされます。
江口さんは、とってもアクティブで、バイクなどもお好きとのこと。身体全体を使った力仕事もあるというところも見せたい、とのことでいろいろな作業をみせてくださいました。詳しくは、以下のページにアップしています。やはり、何度も現場を訪れると理解が深まります。おうかがいするタイミングなども難しいのですが、これからもこまめに足を運びたいなと感じました。

江口裕之さんのお仕事場訪問
http://www.dogulab.com/activity/kn-6/2-2.html