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田村日記

(14) 2017年 秋冬の巻

16/10/15 UP

● 2017年11月21日(火)

【歌舞伎の大道具の雪】

歌舞伎の舞台にちらちらと舞う雪。降らせているのは大道具さんで、ちゃんと係の人がいます。今月(2017年11月)は、雪が降る演目が多くあるので、久しぶりに雪を降らせている現場を見学してきました(高所恐怖症なので、かなりクラクラしながら)。
雪が降る演目は「奥州安達原」「直侍」「新口村」。なんとなく「新口村」がよく降っているイメージですが、時間の割合としては「直侍」のほうがうんと降っています。下手だけ降らせる、舞台全体に降らせる、少し降らせる、うんと降らせるなど、バリエーションも豊か。腕っぷしの強い大道具さんの仕事をそばで見ていると、いろいろな発見がありました。雪だけでも、かなり濃密な世界。
それからどんな仕事も、その詳細を知るって大事だなと改めて感じました。聞くだけとか、書いてあるものを読むだけでなく、動いて自分の眼で見る。それをできるように、交渉する技術も、また大事。

● 2017年10月21日(土)

【アイヌの文化】

東京在住のアイヌの人たちが企画されているアイヌのイベントにでかけてきました。アイヌの歌や踊りとともに、先住民が直面する課題についての講演、美術家の奈良美智さんによるお話などもあり充実の内容でした。
アイヌの踊りで印象に残ったのは、鶴の親が子どもに飛び方を教える舞と、鳥のあまりの美しさに狩人が撃つことができなかったという話を元にした「弓の舞」。自然とともに生きてきたアイヌらしい題材だと思いました。
奈良美智さんは、このところアイヌへの興味が強く、かなり深く交流されているようでした。「(子どものころはわからないことが多かったけど、長く)生きていると、あとからあとから、いろんなことがわかってきて面白い」と言われていましたが、本当にそうだと思いました。
奈良美智さんとは、懇親会でお話する機会があり、北海道の飛生芸術祭のことや、青森での幼少期のお話などをききました。こちらからは伝統芸能の道具が抱える危機的状況についてもお伝えしました。奈良さんは、道具も危ないものがあるけど、道具を作る用具も危ないと心配されていました。漆の木を削る、漆かきの用具も作り手がほとんどいなくなっている、と。たしかに用具は、あまり光が当たらないので、知らない間になくなっているものが多いと思います。こうした用具についても、せめて伝統芸能の道具に関わるものだけでもいいので、もっと調査をしないといけないなと感じました。

アイヌの儀式や踊りについては、近いところでいうと以下の2つの催しがあるようです。

11月4日(土)5日(日)チャランケ祭(東京・中野)
https://charanke.jimdo.com

11月30日(木)「ミンパク オッタ カムイノミ(みんぱくでのカムイノミ)」大阪の国立民族学博物館
「カムイノミとはアイヌ語でカムイ(神・霊的存在)に対して祈りを捧げる儀礼」
http://www.minpaku.ac.jp/museum/event/workshop/kamui17

● 2017年10月15日(日)

【流鏑馬の弓矢】
 
能の流派のひとつに宝生流があります。東京の水道橋に拠点の宝生能楽堂があり、定期的な公演が行われています。近年では、その定期公演の前に1時間のミニ講座「能プラスワン」が行われていて、ときどき拝見しています。

今月は、宝生流宗家の宝生和英氏、能の金剛流若宗家の金剛龍謹(こんごう・たつのり)氏、弓馬術礼法小笠原流31世宗家嫡男の小笠原清基(おがさわら・きよもと)氏による鼎談でした。伝統を未来につないでいくための課題として、小笠原氏が一番最初に「道具の継承」をあげておられたのが、印象的でした。
能楽堂のロビーには、流鏑馬の装束や道具も展示されていました(撮影自由)。能の羽団扇に取り組んでいる最中ということもあり、つい弓やの羽根に眼がいきます。環境保全団体や動物園の猛禽類担当者にも写真を送ったら「オジロワシの幼鳥の羽根ではないか?」というお返事ありました。さまざまな分野の方とネットワークが作れていると、疑問がわいたときにすぐに質問できるのがありがたいです。

能プラスワン
http://www.hosho.or.jp/noh_plus_one/