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18/07/21 UP

NHK「首都圏ネットワーク」(7/20)にて「能の道具と羽根」の取り組みが紹介されました

能で使う「鷺冠」という道具があります。本物のサギの羽根を素材にした美しい冠で、『鷺』という特別な演目の際に使われます。

宝生能楽堂(宝生会)では、この鷺冠を3つ所蔵していますが、そのうち2つは、羽根がとれた状態になっていると能楽師の東川光夫先生からうかがいました。新しく羽根をつけて、きれいにしたいが、現在ではなかなか入手できないので、お困りとのことでした。

2017年から、能の道具「羽団扇」の羽根について、(公財)日本自然保護協会さん、(公財)東京動物園協会が運営する都立の多摩動物公園さんと東川先生と取り組んできていたのですが、その交流からこのたび、サギの羽根を宝生会に譲渡していただくことになりました。

多摩動物公園の飼育係の中島さんが、いろいろ情報を集めてくれて、多くのサギを飼育している井の頭自然文化園に協力を要請。サギの抜け落ちた羽根(通常は廃棄)のなから、鷺冠に似合う羽根をセレクトしてもらって、東川先生に見てもらったところ、うまく使えそうとのことでした。そこで、正式な書類を取り交わし、譲渡という運びになりました。


このたび譲り受けた「コサギの飾り羽根」


2018年7月20日(金)に、東川先生、日本自然保護協会の事務局長の鶴田さんたちと井の頭文化公園におもむき、羽根を受け取りに立ちあいました。また、その模様をNHKで報道していただきました。



放送された番組:『首都圏ネットワーク』 「東京BOX」というコーナーにて紹介 鳥の羽根が「能」で大活躍!?

放送日時:2018年7月20日(金)18:10〜







NHKのHPにも、掲載されました。

動物園の鳥の羽根 能の小道具に

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180720/k10011541791000.html






井の頭自然文化園の水生物館飼育展示係の東條裕子さんと能楽師の東川光夫さん(写真提供:日本自然保護協会)



サギの羽根は、法律(「種の保存法」)にもひっかかっていないため、うまく譲渡してもらえましたが、羽団扇につかわれているイヌワシやオジロワシ、クマタカなどは絶滅危惧種のため、羽根であっても基本、保護増殖目的の利用で、動物園や学術研究機関同士でしか譲渡や移動が認められていません。しかも、飼育している機関も数少ないようです。



鷺冠や羽団扇などの能の道具に見られるように、生物多様性と文化のつながりは切っても切れない関係にあります。さまざまな生き物の絶滅が危惧される中で、自然保護団体や動物園などの保護増殖機関、伝統文化の継承者などが協力しあって、日本の文化と自然のつながりを守っていこうという活動は、今後も必要になってくると思います。



今回の羽根の譲渡を通じて、東川先生も「能と自然」のつながりについて、改めて深く関係性に興味を持たれたようでした。今後は日本の自然を守ることに何か貢献することも能楽関係者に働きかけつつ、希少種の羽根なども能の道具として受け継ぎ、伝統を継承していけるよう、協力を広げていきたいと考えておられるようでした。



道具ラボも引き続き、「羽根」への取り組みに関わっていきたいと思っています。