秀山祭九月大歌舞伎(2016年9月)では、久しぶりに『吉野川』が上演されます。吉野川は、「妹背山婦女庭訓(イモセヤマオンナテイキン)」の一部ですが、「三笠山御殿」「道行恋苧環」などに比べて、上演される機会が少ないですよね。2007年 6月の歌舞伎座での上演以来ということになります。9月公演の道具に関するミニ情報を以下にまとめてお知らせします。
劇場全体:いつもは花道は、下手側に1本ですが、今月は上手側に仮花道を設置し「両花道」です。特別感がありますよ!
『吉野川』
土手の上の二つの屋体(やたい・建物のこと)、その間に流れる大きな川。客席を川に見立てています。
滝車(大道具):川の上流あたりに巨大なバームクーヘンのようなものが数本ありクルクルと回っています。これを「滝車(たきぐるま)」といいます。ときどきしか回っていませんよ。さて、いつ回っているでしょうかね(笑)。その他、あまり書いてしまうとネタバレになって、楽しみを奪ってしまうので控えますが、川もいろいろお芝居をしますよ。
一本引(大道具):歌舞伎で見られる、チョット不思議な動き。障子の建具が一枚の板のようにまとめて、すーっと開くことがあります。これを「一本引(いっぽんびき)」といいます。吉野川では、何度もこの動きがあります。
歌舞伎演目案内「妹背山婦女庭訓」
http://enmokudb.kabuki.ne.jp/repertoire/1176
『碁盤忠信』
両幕外(大道具):歌舞伎の幕引きさんも、かっこいいですよね(つけ打ちさんみたいに、お顔は見えませんが)。花道に俳優さんを残して幕を閉める「幕外(まくそと)」。下手だけでなく、上手も少し奥に引いておく「両幕外」も、幕の動きがかっこいいです!「碁盤忠信」でも、見られます。幕の一番後ろの動きとか素早い。
『らくだ』
枕屏風(小道具):歌舞伎を見ていて、欲しいなーと思う道具のひとつに「枕屏風」があります。低い小さな二つ折りの屏風で、枕のあたりに立てたりして使います。歌舞伎では見得のときにも使いますよね。「らくだ」では、貧乏長屋の部屋に置かれるものなので、古びた枕屏風が使われています。余談になりますが、噺家の春風亭昇太さんのブログにも枕屏風が登場していました。
春風亭昇太さんのブログ
http://www.shunputeishota.com/blog/2014/01/entry-1222.html
*このたびの公演では、リハーサルでは「枕屏風」を使っていましたが、初日の数日後に舞台をみたら、枕屛風はなくなっていました。
道具ではありませんが、「らくだ」に出てくる「かんかんのう」という踊りについても、知っておくとちょっと楽しいですので、解説ページをご紹介します。
歌舞伎美人「歌舞伎 今日のことば」「かんかんのう」
http://www.kabuki-bito.jp/special/kabuki_column/todaysword/post_2.html
『元禄花見踊』
女方のかつら:歌舞伎のかつらの地味だけど重要なポイントは、「たぼ」。後頭部の後ろのあたりのふくらんだ部分です。女方の場合は「丸たぼ」「地たぼ」がメインですが、元禄時代の場合は、つんと先の上がった「たぼ」になります。「元禄花見踊」では、まげの形などもいろいろな形にしてあって、バリーエションが豊かです。まげの形は、「げんこつ」という面白い言葉が入ったものが多く、「ひとつげんこつ」「三つ輪げんこつ」などがあります。その他、「男まげ」「後ろ勝山」など。びんは、ちょっと上げ気味にしてありますよ。顔のまわりに大きな布がついたものは「元禄の帽子」。ぜひ見比べて楽しんでみてください。
秀山祭九月大歌舞伎
平成28年9月1日(木)~25日(日)
http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/493