フェイク・ベッコウ(改良) BEKKO
Vol. 15

(15)2013年8月 苦闘3年。やっと復元できました!

fukugen0

13/09/01 UP

2010年6月から本格的に取り組みはじめた歌舞伎の「人工素材のかんざし、櫛」。多くの方のご協力と応援をいただき、約3年かけて、ようやく復元することができました。ありがとうございました。
私たちの身の回りには、プラスティックの櫛などはたくさんあるので、最初はこんなに長い道のりになるとは夢にも思いませんでした。大量生産品ならば、金型を作って、どんどん生産できますが、歌舞伎の場合は特注品で少量しか必要としません。既製服ではなく、1点もののオートクチュールのドレスのようなものなのです。これまでの苦労の道のりは、以前の記事を読んでいただければおわかりになると思いますが、本当に紆余曲折でした。

時間と資金が必要だったため、トヨタ財団さんに研究助成金を申請したり、クラウドファンディング(READYFOR?)にトライしたりして、苦心しましたが、そのおかげで、たくさんの人との関係ができ、応援していただくことができました。終わってみたら、この「櫛の復元」を通して、貴重な人たちとつながることができましたので、苦労をしてよかったなと感じています。

今回の復元は、以前の「鹿の子」の復元とは異なる意義があったと思います。

1)エシカルな素材
天然素材の「ベッコウ」に代わる人工素材を使いましたが、それは「単なるニセモノ」ではありません。生態系へ負担をかけない「倫理的(エシカル)」な素材へ転換させたことは、とてもよかったと思います。

2)制作手法の近代化
どの道具でも近代化させればよい、というわけではありませんが、ものによっては現代の技術を使うという選択もすべきだと感じています。その第一号となりました(歌舞伎の大道具さんは、現代の既存の技術を巧みに取り入れて、道具を進化させています。大道具さんのお仕事をそばで拝見することで、とても大きな影響を受けています)。

3)市民の資金で、復元
クラウドファンディング(READYFOR?)で67人の一般市民の方が、歌舞伎の櫛を復元させるためにお金で応援をしてくださいました。またトヨタ財団の研究資金からもこの復元のために資金を使わせていただきました。

歌舞伎の櫛は、これでいったん復元できましたが、もう少し本物のベッコウに近い風合いに近づけたいと思っています。また、保管管理の正しい方法などもまだまだ模索中です。まだ資金面の目途が立たないので実現しそうにありませんが、このプロジェクトを通じて知り合った理化学研究所の大森整先生などにもご協力いただき、さらに進化させていければと思っております。

最後になりましたが、この復元に関わってくださった全ての方に感謝を申し上げます。ありがとうございました!

【櫛の復元についての新聞報道】

2013年8月24(土)朝日新聞

朝日新聞に「歌舞伎の櫛の復元」についてご紹介いただきました。


2013年8月21日(水)産経新聞

産経新聞「きょうの人」に田村民子をご紹介いただきました。