伝統文化のための竹プロジェクト
Vol. 5

(5)2015年9月 竹林の管理を学ぶ(その4)

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

15/10/04 UP

歌舞伎の小道具会社の近藤真理子さんと長村みち子さんが、「日本の竹ファンクラブ」が開催する竹林管理の講座の4回目に参加してこられました。今回は長村さんがレポートをしてくれました。

特定非営利活動法人 日本の竹ファンクラブ
http://takefan.jp/index.html

***長村みち子さんの講座レポート***

9月19日(土)
ここのところ天候の悪さからか気温が下がっていたのですが、当日は久方ぶりの晴れ間かつ暑い日でした。連日の雨でぬかるんでいる足元には、至る所に多種多様のキノコ達が。山の中はすっかり秋仕様です。カメラ撮影しながらだったので、ついつい手袋をはめるのを失念した結果、手の甲は「餌キター!」と、虫さされだらけ・・・。

さて、そんな、久しぶりの竹の学校! 竹林管理コース第4回目です。

前半は『実習:竹林の調査』

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

その竹林をどうしたいのか。
どうしたいのかを決めたら、その竹林にする為の「竹の適正本数」を決め、本数を越えた竹は切っていきます。
・黄色のテープで竹林内を区切って範囲を定め、2人1チームで担当範囲の竹の本数を数える。
・竹の重なり具合などを見ながら、切ると決めた竹に白い紐を結んでいく。
・竹林の【中】からと【外】からではまた見え方が違うので、一度外に出て全体を見回してみる。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 切る竹に白い紐をつける

後半は『竹林の間伐の仕方』

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

午前中とは別の竹林に移動し、古い竹を間伐する作業を実施。ざっくりとこんな感じです。
・間伐する竹を決める
・倒す方向を決める
・土から出ているすぐ上くらいの節を切る
・竹を真横に倒す
・3mごとくらいに切断する
・枝を落とす
・枝の向きは、表裏を揃えて束ねる
・邪魔にならない場所に竹・枝をまとめる
OLYMPUS DIGITAL CAMERA 近藤真理子さん

間伐作業の場合は、竹を切っても別の竹に引っかかってしまう事が殆どなので、この倒すというのがまず大変でした。倒す方向と逆に『竹を抱えて走る』という、なかなかにハードな作業です…これは実際にやらないとわからないんですが(汗)
まずですね、竹一本を下から見上げると、メチャクチャ長いというのは想像できると思うんですが、「どこまで連れて行けば倒れるんだ!」と思いながらどこまでも走ります。竹の長さは勿論一本の重さに比例するので…躊躇せず一気に駆け抜けないと、逆にしんどくなってしまうんですね。
切るのが楽しくて、どんどん切っていってしまうと後処理が大変になるので、必ず一本ずつ処理してくことを心がけた方がいいそうです。
今回切った竹の一部は、竹燈篭に転用するそうで、皆で竹を所定の場所へ何度も往復して運びました。50本以上あったでしょうかね。

竹林管理の大変さの入り口にしか立っていませんが、「恒久的に、安定的に、必要とする職人さんにクオリティの高い竹を供給し続ける為には、このハードな作業を年中し続けなければならない」という現実があるので、そこら辺が最も大きな課題になってくるなと。

伝統芸能にとって、竹の問題はもうタイムリミットが目の前に迫っていて・・・。竹を材料に使う職人さん、竹を扱う竹屋さんなど本当に多数の方々から竹の質が落ちてい るという嘆きの声が聞かれます。

私たちが、個人的にこの大きな課題に取り組み続けるには、勿論すぐに限界が来るでしょう。
それでも今、立ち向かうのをやめてしまったら、次に誰が真剣に考え動いてくれるでしょうか?
もしそんな時が来るとしたら、それはきっと、「本当に材料に出来る質の竹が、もう手に入らない」となった時でしょう。
「え?竹なんて沢山生えてるじゃない?」って思うのが一般的な反応だと思います。伝統芸能を支えている「竹」は、普通に生えている普通の竹では駄目なんです。
今が、あらゆる面で『間に合う』ラストチャンスだと。
それだけが私たちの原動力です。

まだ小さな小さな一歩しか進めていませんが、いつかこの一歩が、振り返った時、大きな道になっていますように。
あ。道じゃなくて、伝統芸能用竹林とかになってますように(笑)
******

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

竹はどこにでもあるようでいて、伝統芸能の道具の素材にするための「良質な竹」は、希少になっているということ。そして、竹林を的確に管理すれば、良質の竹は確保できるが、その「管理」が実に手間と技術が必要であることがわかります。つまり経済、お金の問題が浮かび上がってくるわけです
これからも、しばらくは竹林管理の技術を学びながら、今後の方策を練っていきたいと思います。

※このページの写真は全て長村みち子さんから提供いただきました。