百姓蓑(復元)MINO
Vol. 00

(0)プロローグ 歌舞伎・小道具の「百姓蓑」を復元する

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14/12/17 UP

歌舞伎の舞台には、現代の日常生活では使われなくなった道具がたくさん登場します。雨具の蓑(みの)もそのひとつ。歌舞伎では「小道具」が担当しており、侍用、お姫様用、農民用などさまざまな種類の蓑を調達し、細かく使い分けています。

その蓑のなかで、現在(2014年1月)製作ルートが途絶えてしまって困っているというのが農民の役が着用する「百姓蓑(ひゃくしょうみの」です。平成12(2000)年に社団法人日本俳優協会(現在は、公益社団法人)から発行された『歌舞伎の舞台技術と技術者たち』にも「蓑は手に入りにくい」と記載されており、少なくとも14年前にすでに入手経路が危うい状態であったことがわかります。

歌舞伎演目案内Webサイト『仮名手本忠臣蔵』「作品のあらすじ」内に百姓蓑を着用した早野勘平の写真が掲載されています(「五段目」の左の写真)。
http://enmokudb.kabuki.ne.jp/repertoire/67?tab=arasuji

この件については、いずれ道具ラボも関わらせていただきたいと考えていました。そんな折、よい機会がめぐってきました。歌舞伎俳優名鑑『かぶき手帖2014』で小道具を特集することとなり、2013年の秋から歌舞伎の小道具を一手に引き受けている藤浪小道具株式会社さんを取材させていただくことになったのです。そして藤浪小道具で中堅として活躍されている小道具方の近藤真理子さんから、百姓蓑の調達にまつわる経緯や、どのような質が求められるのかなどを細かくうかがうことができました。近藤さんはフットワークが軽く、仕事がお忙しいにも関わらず、俊敏に動き回ってくださる方です。近藤さんと道具ラボが連携すれば、新しい製作ルートがみつかるかもしれない。そう考えて復元プロジェクトをスタートさせることにしました。

道具ラボには、生物学の専門家をはじめ、文化人類学者や自然科学系の研究者など、多様な協力者がいます。広い視野でよりよい形の復元にしたいと思います。

2014年1月
伝統芸能の道具ラボ 代表 田村民子

表紙写真:百姓蓑(写真提供:藤浪小道具・近藤真理子さん)

『かぶき手帖2014』
編集・発行:公益社団法人日本俳優協会・松竹株式会社・社団法人伝統歌舞伎保存会
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『仮名手本忠臣蔵』『助六』『青砥稿花紅彩画 白浪五人男』『京鹿子娘道成寺』