百姓蓑(復元)MINO
Vol. 1

(1)「百姓蓑」の課題を整理

mino0002

14/12/30 UP

「百姓蓑」とは、どんなものか? どうして作ることができなくなっているのか、課題点などを整理してみました。

【概要:経緯と目標】
歌舞伎の舞台では、昔の雨具である蓑(みの)が頻繁に登場する。ひとくちに蓑といっても、侍用、姫用、農民用など種類が多くあり、それぞれ異なる素材を用い、作り方も異なっている。2014年1月現在、「百姓蓑」と呼ばれる農民の役が着用する蓑については、作り手もなく新規製作ができない状態にある。
現在はまだストックがあり上演に支障はきたしていないが、歌舞伎では1回の興行が25日間連続であり、毎日強いライトにさらされ、着脱などによる消耗もはげしい。
藤浪小道具の近藤真理子さんによると、百姓蓑の素材が何であるかも分かってないという。まずはどのような植物が素材となっているのかをつきとめ、新しい調達方法をみつけるとともに、作り方も解明し、安定して供給される状態にしたい。

【百姓蓑について】
『仮名手本忠臣蔵(かなてほんちゅうしんぐら)』の五段目・六段目の早野勘平役などがこの百姓蓑を着用する。早野勘平という役は、百姓ではあるが大幹部俳優が演じる大きな役である。その名の通り、百姓や猟師などの役が使用。色が茶褐色(赤みがかかっている)であることが特徴。

歌舞伎演目案内Webサイト『仮名手本忠臣蔵』「作品のあらすじ」内に百姓蓑を着用した早野勘平の写真が掲載されています(「五段目」の左の写真)。
http://enmokudb.kabuki.ne.jp/repertoire/67?tab=arasuji

蓑は、よく雪の場面で使用される。その際は、薄い綿を蓑に貼り付けて雪をかぶったように見せる(「雪持ち」と呼ぶ)。しかし、すぐにはがれてしまうので、1カ月の公演期間中に何度か貼り換える。そうしているうちに、どんどん蓑は痛む。いったん雪持ち蓑として使用したものは、雪持ちでしか使用できなくなる。

TOPの写真は、古い百姓蓑。素材の抜け落ちが激しく、薄くなったため舞台では使用できなくなったもの。
(写真提供:藤浪小道具 近藤真理子さん)