百姓蓑(復元)MINO
Vol. 14

(14)2015年7月 「百姓蓑」の復元をふりかえる(小道具製作者インタビュー)

蓑づくり研修に関わったメンバー。左から映像記録を担当されたStudio.nom 野村祐紀さん、伝統芸能の道具ラボ 田村民子、藤浪小道具 近藤真理子さん、蓑づくりの指導をしてくださった房総のむら 後藤容子さん、藤浪小道具の工作課の長谷川浩司さん、藤浪小道具の工作課の稲垣涼さん

15/07/01 UP

歌舞伎の小道具「百姓蓑」の復元は、さまざまな方のご協力を経て、ほぼ完成しました。実際に百姓蓑を作る作業を担当された藤浪小道具の工作課(小道具を製作する部署)の長谷川浩司さんに、今回の復元について感想をうかがってみました。

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藤浪小道具の工作課の長谷川浩司さんと、蓑づくりの指導をしてくださった房総のむらの後藤容子さん(写真提供:Studio.nom 野村祐紀)

Q: 「房総のむら」のみなさんと関わる以前は、百姓蓑は自分たちで作れると思っていましたか?

A: 歌舞伎の小道具のなかでも、蓑は材料すべてが植物です。まず「百姓蓑」の素材がどんな植物なのか、またそれが現在でも入手可能であるのかもわかりませんでした。ですから、「房総のむら」のみなさんに出会わなければ、百姓蓑は作れなかったと思います。

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「房総のむら」には古い町並みが再現されており、時代劇などのロケにも使われる。(写真提供:長村みち子)

【千葉県立房総のむら】千葉県印旛郡栄町龍角寺1028

https://www.chiba-muse.or.jp/MURA/index.html


Q: 百姓蓑の作り方を教えてもらえるところがあると聞いたとき、どんな感想をもちましたか?

A: 百姓蓑はなくてはならない大事な小道具のひとつです。百姓蓑を絶やしてはいけないと感じていたので、このチャンスを逃してはいけないと感じました。

Q: 「房総のむら」のみなさんから百姓蓑の作り方を教えてもらったり、交流したりして、いかがでしたか?

A: 丁寧にご指導いただいたことに、大変感謝しています。今回、蓑づくりを教えていただいた私と稲垣は、蓑が生活用具として実際に使用されていた時代に育っていません。そんな二人に、蓑作りの各工程を何度も繰り返し丁寧に指導いただき、また当時の生活風景の話もしてくださり、本当に勉強になりました。ものづくりの楽しさを再確認させていただきました。

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蓑づくりの達人である房総のむらの高津さん(中央)から指導を受ける。(写真提供:Studio.nom 野村祐紀)

Q: 百姓蓑を作る上で、一番難しかった工程はどれですか?

A: 蓑の基礎の部分になるネット作りです。この工程をしっかりやっておかないと、後の作業のすべてに影響がでます。これは、作業が進むにつれて、強く実感しました。

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苦労したネットづくり。(写真提供:Studio.nom 野村祐紀)

Q: 自分の手で百姓蓑を作りあげた感想を教えてください。

A: 完成したときは、いろいろな思い出がよみがえり、完成した喜びとともに、お世話になった方々とお別れしなければならない寂しさも同時に感じました。この復元プロジェクトの話がもちこまれてきた当初のこと、房総のむらの方々と初めてお会いしたときのこと、チガヤの刈り取り作業、天日干し加工で苦労したことなど、いろんなことがなつかしく思い出されました。

Q: 今後、どんな風に百姓蓑の製作を続けていきたいですか?

A: 作業工程は映像で記録をしてもらいましたので、それも参考にしながら後輩たちに大切に伝えていきたいです。また、今回お世話になった方々ともコンタクトを取り続けて、いつでも相談できるようにしておきたいなと思っています。

Q: 「房総のむら」のみなさんへ、一言おねがいします!

A: 職員の方をはじめ、蓑作りでは高津さん、後藤さん、林田さん、福岡さんにお世話になりました。みなさん、少しも嫌な顔をせず、丁寧にご指導いただき、本当にありがとうございました。プライベートでも「房総のむら」を訪れたいと思っていますので、そのときは、みなさんに会いに行きたいと思っています。

Q: 今回の百姓蓑の復元では、「房総のむら」のみなさん、「房総のむら」を紹介してくださった生物多様性保全の専門家の北澤哲弥さん、道具ラボの田村など、藤浪小道具以外の外部の人も関わりました。こうした人たちと一緒に復元を行った感想を教えてください。

A: 日頃は、通常業務で手一杯な部分もあり、田村さんや北澤さん、房総のむらの方々のご協力を得なければ、なかなか復元に着手できなかったと思います。今回の件で、はじめて道具ラボの存在も知りました。

当社で抱えていた問題を、社内を含めたくさんの人の力を借りて実現できたことに、本当に感謝しております。人とのつながりの大切さを改めて実感いたしました。今回の経験は、これから仕事をしていく上で、大きな励みになると思います。

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タイトル画像:蓑づくり研修に関わったメンバー。左から映像記録を担当されたStudio.nom 野村祐紀さん、伝統芸能の道具ラボ 田村民子、藤浪小道具 近藤真理子さん、蓑づくりの指導をしてくださった房総のむら 後藤容子さん、藤浪小道具の工作課の長谷川浩司さん、藤浪小道具の工作課の稲垣涼さん