フェイク・ベッコウ(改良) BEKKO
Vol. 14

(14)2013年8月 再び福井県鯖江市へ

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13/08/22 UP

2013年5月に初めて鯖江市を訪問してから、約3カ月。再び、歌舞伎床山の高橋敏夫さんと鯖江市に向かいました。
5月以降も、眼鏡の加工会社の「長井」の社長の長井正雄さんと連絡を取り合い、新たにお願いしたかんざしのサンプル品が届くなど予想以上のスピードで、どんどん復元が進んでいきました。長井さんはお仕事もお忙しく、あちこちを飛び回られているのですが、時間をつくって対応してくださっていました。高橋さんも、その出来映えのよさに驚いておられ、「次に行くときは、こういうのも作れるか相談してみたい」とすっかり頼りにされているようでした。

BSKHQ2zCUAAfrX0 小松空港は、歌舞伎ファンにはおなじみの「安宅の関」の近くにあります。

鯖江へは、羽田空港から石川県の小松空港へ飛行機で向かいます。前回は、初対面ということもあり少し緊張していましたが、今回は2回目でもあり、またすでに手応えも感じていましたので、期待がふくらみます。前回同様、鯖江市役所の渡辺賢さんにお世話になりながら、長井さんの会社を訪問しました。

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まずは長井さんから、これまで復元してもらった櫛やかんざしの作り方を詳しく説明していただきました。私たちのような素人がぼーっと見ていると、見過ごしてしまうのですが、説明をうかがうと、この小さくて一見シンプルそうに見える道具にすごい技術が使われていることがよくわかりました。素材は、アセチロイドというプラスティックのようなものなのですが、それを切ったり、削ったり、貼り合わせたりして成形します。そんなの簡単じゃないかと思ってしまうのですが、長井さんの作られたものは、どこを貼り合わせているのか全くわからないのです。よーく考えると、あれ、これどうやって作っているんだろう?という感じ。

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それから、金型というものの面白さにも開眼しました。文章でお伝えするのが難しいのですが、どんな金型でどんな風に作っていくかを考える工程は、パズルのようでもあり、ひらめきの世界です。長井さんは、心の底からものを作ることを楽しまれている。それが、じんじん伝わってきました。細かいことは割愛しますが、いつかお話ができる機会があれば、たくさんの人にお伝えしてみたいです(サンプル作りの過程で出た、途中経過のかんざしも、いただいてきました!)。

長井さんと高橋さんもすっかり打ち解けて、今後の連携もここまでくればうまくいきそうです。2時間以上、打合せをしたり雑談をしたりして、会合は終了し、長井さんとお別れしました。高橋敏夫さん、長井正雄さん、鯖江市役所の渡辺賢さん、そして田村。この4人が出会えて、本当によかったねとみんなでしみじみお話しました。これで、歌舞伎の櫛の復元も無事終了。3年以上かかった復元プロジェクトですが、なんとかいいところに着地できて、ほっとしました。