それまで気にも留めなかったものも、名前を知ると一気に親しみがわく。
どんなに小さな道具にも、必ず名前がある。
それまで知らなかった道具の、その名前を裏方さんから教えてもらうとき。
わたしの心は、とても興奮する。
歌舞伎のかつらの髪を結い上げる「床山」という仕事では、
さまざまな櫛を使う。
そのなかでも、床山さんのトレードマークのような存在が「なぎなた」という櫛だ。
たしかに「なた」のような形をしているけど、なんという不思議な響きだろう。
結い上げたかつらの髪をちょこちょこっと直すときに使うものだから、
自分の耳にひょいとひっかけている。
これが、いかにも仕事人という感じでかっこいい。
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