ものを作る人を取材すると自分も手を動かしたくなります。
そんな願望のささやかな実現が包丁研ぎ。土田刃物店の土田昇さんを師匠とあおいで修業中です。
今日は天然砥石・青砥の表面を平らにするツラ直しをしました。愛用の菜切り包丁を人造砥石の中研(なかと)で少し研いでから、いい平面が出た青砥(仕上げ用)をささっと。よく切れるようになりました!
砥石(といし)は、使ったことがない人もいるかもしれませんが、金属などの表面を研磨する道具です。伝統芸能の道具に関わる人のなかには、刃物を扱う職人さんもいて、そういう人にとって「よく切れる刃物」は必需品です。使っていくうちに切れなくなっていきますから(包丁もそうですよね)、刃物の手入れが必要になります。そこで活躍するのが砥石なんです。
近年は、ざくざく研げる人造の砥石が主流となっていますが、天然の砥石もまだ健在です。自分で使ってみると、天然の砥石は産地によって個性があり、微妙な使い心地の差があってなかなかおもしろいのです。
砥石は研磨粒子の大きい方から、荒砥(あらと)、中砥(なかと)、仕上砥(しあげと)の3種類あります。
土田さんからは仕上げ用の天然砥石を2丁、譲っていただきました。ひとつは青砥(あおと)、もうひとつは白っぽい沼田。どちらもティッシュボックスを縦半分にしたくらいの大きさ。研いでいてもグラグラせずにすごい安定感! 青砥(上の写真)は、京都の亀岡市からとれるもので、その名の通り青い。研いでいると、きれいな深緑の研ぎ汁が流れ出すのも見ていて気分が良いのです(完全に酔ってますね)。私が愛用している菜切り包丁は青砥との相性がいいようで、ついつい青砥ばかり使ってしまいます。土田さん曰く「別の包丁だと沼田が合うのかもよ」とのこと。
「切れ味がよくなったけど、切ったごぼうが包丁にくっつく!」と土田さんに相談したところ、こんな返事が返ってきました。
「切り落とされる側の刃角度を少しだけ鈍角にすると緩和出来るかもです。葉物より根菜の方がなぜかくっつき易く感じます。地中にあるものは水分や養分を吸い取ろうとする組織になっているからでしょうかねえ。切るって素材解釈なんです」。
わお!「切るって素材解釈」ってけだし名言! 対話するたびに、新しい発見がある。ズブズブの素人相手にこんな高級な講義をしてもらって、よいのかしらーと思います。
自分で使う道具を自分の手で手入れするって、心の循環効果があるのか、すごく気持ちがすっきりします。自画自賛しながら(!)、包丁研ぎの腕を上げていきたいです。
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