鷹匠の道具
Vol. 00

(0)プロローグ 鷹匠が使う「大緒」を復元する

ooo_top

14/04/16 UP

2013年春。ひょんなご縁から、鷹匠さんが使う特殊な組紐「大緒(おおを)」の復元に関わることになりました。ちょうど1年前くらいに復元を完成させたのですが、まだ記事にまとめていなかったので遅ればせながらその経緯と記録をご紹介します。
(2014年4月16日 伝統芸能の道具ラボ 代表 田村民子)

そもそも「伝統芸能の道具ラボ」は、その名の通り「伝統芸能の道具」を活動のフィールドとしています。それがどうして、鷹匠の道具を復元したのか・・・。まずはそこからお話しないといけません。そこにはひとりのキーパーソンがいます。道具ラボの活動を立ち上げ当初から応援し、協力をしてくださっている樋野晶子さんです。道具ラボでは、2011年11月から能楽の道具の調査や復元に関わってきました。晶子さんは大学時代に能を習っておられたこともあり、あれこれと相談にのってもらってきました。

能で使われる道具のひとつに「羽団扇(はうちわ)」というものがあります。クマタカやイヌワシなど身体の大きな希少な鳥の羽で作られていますが、近年、その羽が入手しづらくなっているという事情があります。そうした希少生物由来の素材を、生態系にも配慮しつつ現代においてどのように調達すべきか、いろいろ考えていました。晶子さんともいろいろ話していたのですが、晶子さんは鷹匠に相談してみる、という斬新な手法を思いついたのです。そのきっかけになったのは、女性で初めて鷹匠になった大塚紀子さんの著書『鷹匠の技とこころ 鷹狩文化と諏訪流放鷹術』(白水社 2011)だったそうです。

晶子さんは、大塚さんの講演に出かけるなどして大塚さんと交流をはじめました。そして、羽団扇の件を相談した・・のだと思いますが、なんと逆に鷹匠が使う特殊な組紐「大緒」が作れなくなっているということを相談されたのです(!)。丁度同じころに、道具ラボの活動の一環として晶子さんには歌舞伎などの組紐や房をつくる職人の江口裕之さんをご紹介していました。晶子さんは江口さんなら大緒を復元させることができるのではないかと思いつきます。晶子さんと道具ラボの田村が相談をし、大塚さんと江口さんをお引き合わせしてみようということになりました。

ちょっと長い前説明となりましたが、このような面白い経緯で、鷹匠さんと道具ラボは関わることになりました。鷹匠さんと関わることになるなんて、想像もしませんでしたが、鷹匠が使う道具に触れ、多くの知恵が詰まっていることを深く知ることができ、大変有意義なプロジェクトとなりました。

『鷹匠の技とこころ 鷹狩文化と諏訪流放鷹術』の詳細については以下の白水社のWebサイトをご覧ください。
http://www.hakusuisha.co.jp/detail/index.php?pro_id=08169

(表紙写真:柏屋江口)

Tags: