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田村日記

2026年 新春のご挨拶

26/01/03 UP

あけましておめでとうございます。
新年のご挨拶として、昨年の活動のご報告と本年の抱負を綴ってみたいと思います。

昨年は、映画「国宝」のヒットで歌舞伎に注目が集まったこともあり、さまざまな媒体からお声がけをいただき、新聞に記事を書いたり、映像メディアに出演したりしました。芸能の道具、そして裏方さんをはじめ道具に携わる人たちの仕事の素晴らしさや魅力は、社会に充分に伝わっていないと感じています。文章だったり、講演などでのお話だったり、私にできることは限られていますが、機会があればいろいろな形で魅力を伝えていきたいと思っています。

昨年は、久しぶりに歌舞伎俳優名鑑『かぶき手帖』の特集記事を担当させてもらいました。2012年版から3年連続で、かつらと衣裳、小道具、大道具について書いたのですが、その続編という感じです。歌舞伎の裏方の世界は、それぞれに奥深く、また携わる人数も多く私の中心的な研究フィールドです。前回の集中取材から10年以上が経ち、働く現場の様子も変わってきたところもあります。コロナ禍という大きな谷もありましたし、原材料の調達などは以前よりも厳しくなっています。裏方の記録という意味も込めて、再び裏方シリーズの特集をやろうという話になったのでした。

2026年版は「歌舞伎衣裳の技・人・もの」というタイトルとし、衣裳の仕事を追いかけました。2024年の冬から衣裳さんと相談して取材計画を立て、主に2025年1月から4月まで重点的に取材をしました。特集記事を読んでいただけるとわかるのですが、とにかく彼らの仕事は、時間に追われています。そのスピード感をお伝えしたく、ドキュメント風に書いてみました。もうひとつ伝えたかったのは、生地調達が困難になっていること。白生地屋さんや、山形県米沢市の織元も訪問して、一般の着物生地の生産状況などもうかがいながら、歌舞伎の衣裳という特殊用途で使う生地についても迫ってみました。歌舞伎を歌舞伎たらしめている華やかな衣裳ですが、それを作る人たちの奮闘があるからこそ、あの舞台があるのだということを改めて実感しました。

取材では衣裳さんが熱心に付き合ってくださいました。長い時間を一緒に過ごすことで言葉だけでなく、眼差しや表情、たたずまいなど身体からも「衣裳方として生きる姿勢」を感じることができました。記事として充分にまとめられなかったことを反省していますが、ご興味がありましたら読んでいただけるとうれしいです。なお今年も「技・人・もの」の第二弾の取材を行う予定です。

そしてもうひとつ、大皿を回すような仕事にも取り組んでいます。昨年から、歌舞伎研究者の和田真生さんと一緒に歌舞伎の道具の本作りに取りかかっています。今年はそれを本格化するフェーズに入ります。長年、基礎資料となる本を1冊作りたいと考えてきたのですが、なかなか実現しませんでした。幸い、トヨタ財団さんから助成金をいただくことが決まり、ようやくスタートさせることができました。刊行は、2027年1月予定(日英二カ国語で出版)。「芸能道具学」という新しい研究領域を立ち上げるという目標も掲げています。

歌舞伎の道具の世界は研究対象になりにくく、近年も大きな進展はみられていません。しかし、歌舞伎研究においては作品や作劇、演出に関しても、道具との相互関係を検証する必要があると私たちは考えています。また、学問として成立することで、裏方の仕事の地位を向上させたいという気持ちもあります。まずは歌舞伎の道具を足がかりとして「芸能道具学」の基礎を作りたいです。

今年も芸能道具のために力を尽くしてまいります。これからも応援いただけましたらうれしいです。

2026年 1月 田村民子

写真:元旦用の青竹の箸。能の作り物を手がける竹清堂さんから贈っていただきました。

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