後継者づくり支援
Vol. 1

(1) 歌舞伎のかんざしを作る職人になる

kodai2013

13/02/16 UP

歌舞伎の女方(おんながた)の日本髪は、さまざまな「かんざし」で彩られます。素材などによって分類すると、だいたい以下のようになります。

1:色とりどりの布で作られた「つまみかんざし」
2:金属製のかんざし(平うちのかんざしなど)
3:紙で作られたかんざし(すすきのかんざし、姫の前ざしなど)
4:べっ甲、あるいはべっ甲に似せた人工素材で作られたかんざし
5:新歌舞伎などで使われる、写実に近いかんざし(古代のかんざしなど)

こうしたかんざしは、床山と呼ばれる日本髪を結い上げる職人がかんざし職人に指示を出して作らせ、床山がそれを買い上げ所有します。そして役の決まりに従ってかつらに飾り付けていきます。かんざしを作る職人は、「つまみかんざし」を作る専門、金属のかんざしを作る専門、などという風に分かれています。床山は望み通りの品質のかんざしを作れる職人を確保しておかなくてはなりません。それがなかなか大変なようです。

そこで2011年1月に、歌舞伎のかんざしを作ってみいたいという若い女性を床山の親方さんにお引き合わせました。詳しい経緯などは以下の記事をご覧ください。

「かんざし職人をめざす」http://www.dogulab.com/activity/k-2/03.html

この記事に出てくる八田春海さんと、2013年2月13日にお会いしました。彼女はもともとジュエリー製作をメインに仕事をしてきており、今もそれは変わりませんが、仕事のバリエーションのひとつとして「歌舞伎の舞台で使われるかんざし」をてがけるようになりました。
彼女とは、定期的に何度もお会いしています。技術を高めるために地道な努力を重ねており、「こういう技術の練習をしています」とか「こんなのを作りました」など、こまめに報告をしてくれます。この日は、「古代のかんざし」と呼ばれる金属製のかんざしの修理をてがけたものを見せてくれました(以下の写真は八田春海さんです!)。

八田さん

チェーンの部分にたくさん飾りがついていたものを、「もっとシンプルにしてほしい」という床山さんの要望を受けて、修理したそうです。全体のトーンを壊さないような光りにくいチェーンを探して、うまく組み合わせています。その他、折れた部分などもうまく修理してあります。春海さんと出逢って2年。最初は歌舞伎を見たこともなく、一緒に歌舞伎を見に行ったものでした。それからどんどん歌舞伎のことも吸収し、「両天が〜」なんて、専門用語などもすっと出てくるようになりました(両天とは髪飾りの1種です)。着実に成長しており、頼もしいかぎりです。

でも理想の仕事の仕方には、まだまだ遠い道のりです。これは春海さんの技術の問題だけでなく、もっと構造的な問題があります。春海さんには技術を高める努力をしてもらいつつ、私は「構造的な問題(かんざしを作る職人が歌舞伎の仕事できちんと収益をあげられるようなビジネスモデルを作ること)」にも取り組んでいかなくてはなりません。また、春海さんには、「べっ甲に似せた人工素材のかんざし」を作ることにも関わってもらっていますが、そちらのほうの素材や技術的な問題はまだ解決していません(「活動報告」のなかの「フェイク・ベッコウ(改良) BEKKO」をご覧ください)。

このように、まだまだ課題は山積みなのですが、春海さんはいつも「技術をもっと磨きたい」という強い姿勢を持ち続け、真っ直ぐ進もうとしています。こちらも粘り強く、課題解決に向き合っていくつもりです。

*関連記事:「活動こぼれ話」(1) 2013年 春の巻 2013年2月13日(水)